2026年11月02日

量子コンピューティング

「『量子コンピュータ』を通して半導体産業の未来を問い直す」を開催しました(7/28)

2026年7月28日(火)、RISE GATE NIHONBASHIおよびオンラインにて、「『量子コンピュータ』を通して半導体産業の未来を問い直す」を開催しました。
本イベントは、量子技術イノベーション拠点(QIH)が主催し、一般社団法人RISE-A、国立研究開発法人理化学研究所の共催、株式会社QunaSysの企画・運営により実施しました。
半導体産業では、材料開発や製造プロセスの高度化に伴い、シミュレーションやデータ活用など計算科学の重要性が高まっています。本イベントでは、「材料計算」「流体計算」「新たな事業機会」の3つの視点から、量子コンピュータと半導体産業の接点について議論が行われ、現地参加・オンライン参加あわせて250名を超える方にご参加いただくことが出来ました。

材料計算を問い直す ― 量子コンピュータは半導体材料開発にどう貢献できるのか

Session 1では、東京大学 生産技術研究所の溝口照康氏、東京大学大学院 理学系研究科の藤堂眞治氏が登壇し、QunaSysの渡辺海氏をモデレーターに、半導体材料開発における計算技術の進展と量子コンピュータの可能性について議論が行われました。
溝口氏からは、機械学習ポテンシャルを活用した半導体関連材料のシミュレーションや、生成AIによる新材料探索、AIエージェントを活用した研究開発の最新動向について紹介されました。計算技術の進化によって、従来は多くの時間を要していた材料計算が高速化する一方、データ量の増大や電力・熱などの課題も顕在化しており、量子計算をはじめとする新たな計算原理への期待が示されました。
また、藤堂氏からは、従来のAIが抱える計算資源やエネルギー効率などの課題を踏まえ、量子ソフトウェアとHPC(高性能計算)・シミュレーション技術を組み合わせた「サスティナブルAI」の実現に向けた取り組みが紹介されました。量子シミュレーションや量子機械学習、量子最適化を連携させる構想に加え、古典計算に対する量子計算の優位性が期待される領域についても共有されました。

流体計算を問い直す ― 半導体製造・デバイス開発を支えるCAEの未来

Session 2では、理化学研究所の大友洋氏、QunaSysの中村幸輝氏に加え、神戸大学大学院のKim Sangwon氏も登壇し、渡辺氏をモデレーターに、半導体製造を支える流体計算やCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)の可能性について議論が行われました。
大友氏からは、分子レベルから製造装置レベルまで、異なるスケールの現象をつなぐマルチスケールシミュレーションについて解説が行われました。半導体の高性能化に伴い重要性が増す冷却技術や、原子層堆積(ALD)プロセスにおける成膜均一性の予測などを例に、量子計算による原子スケールの情報と流体シミュレーションを組み合わせることで、製造プロセスの高精度な予測・設計につながる可能性が示されました。
また、中村氏からは、量子アルゴリズムを流体計算へ応用する研究事例が紹介されました。非線形プラズマ流体や格子ボルツマン法に基づく流れ場の計算など、具体的な研究成果を交えながら、量子計算による大規模・高精度な流体解析への期待と、今後の技術的な課題について共有されました。

量子コンピュータは半導体産業の「次の市場」になり得るか

Session 3では、理化学研究所の樽茶清悟氏、株式会社日立製作所の有本英生氏が登壇し、QunaSysの松岡智代氏をモデレーターに、量子コンピュータ産業における半導体関連企業の事業機会について議論が行われました。
樽茶氏からは、半導体量子コンピュータの仕組みやシリコン量子ビットの特徴について解説が行われました。シリコン量子ビットは、既存のCMOS製造技術との親和性や集積化の可能性などに強みがある一方、大規模化に向けては量子ビットの高精度な制御や誤り訂正、パッケージング、高密度配線、冷却など、さまざまな技術課題があることが紹介されました。
また、有本氏からは、日立が進めるシリコン量子コンピュータの研究開発について紹介されました。量子ビットの自動制御や極低温制御システム、大規模化に向けた取り組みに加え、既存の半導体製造技術を活用できる領域と、量子コンピュータ向けに新たな開発が必要となる領域について解説が行われました。
さらに、半導体産業が培ってきた微細加工、材料、計測・検査、先端パッケージングなどの技術が、量子コンピュータの実用化を支える重要な基盤となることが示されました。量子コンピュータを新たな産業・市場として捉え、半導体関連企業に広がる事業機会について考えるセッションとなりました。

交流を通じて広がる、半導体×量子の可能性

セッション終了後には交流会が行われ、登壇者と参加者、参加者同士による交流が深まりました。半導体産業と量子コンピュータの接点をテーマに、研究開発や技術活用、今後の事業機会などについて情報交換が行われました。
本イベントは、量子コンピュータを半導体研究開発に「活用する」という視点に加え、半導体産業が量子コンピュータの実用化を「支える」という視点からも、両者の可能性を多角的に考える機会となりました。
開催後アンケートでは「半導体で実現する将来的な進展を引き続き取り上げてほしい」「量子のテーマは継続的に聞きたいです」といった意見が寄せられ、半導体×量子への関心の高さが伺えました。
今後もRISE-Aでは、半導体産業とさまざまな先端技術との接点を探り、新たな研究開発や事業機会、産業横断の共創につながる場づくりを推進してまいります。